一年生達が広大かつ複雑なホグワーツ城の中で迷うことも少なくなってきた。もっとも、だまし階段や動く階段などにてこずることはあるが。
は早起きである。その分夜も早いが。
今日も小鳥の声と同時にベッドを抜け出し、洗面所で顔を洗って髪を梳かす。あまり寝相が良いほうではないので、けっこう寝癖がついている。
今日も右側に強烈な一房があり、鏡の中のの顔が盛大にしかめられた。そうすると、もともと少し鋭い目つきが一層険しくなり、ちょっと落ち込む。
自分の髪に悪態をつきながら何とか寝癖をごまかすと、ベッドに戻って着替え、授業の用意をする。
それが終わっても朝食にはまだ時間がある。
は時計を確認すると、嬉しい事に同室となったリリーを起こさないように、そっと部屋から出て行った。
まだ談話室には誰もいない。暖炉にも火はついておらず少々肌寒い。
は真っ直ぐに扉へ向かうと、廊下に出て早朝の城内の散策に出た。
だいたいリリーが談話室に下りてくるまでの間の、これがの日課であった。
のんびりとまだ絵画さえ眠っている廊下を歩きながら、は平和を噛み締めていた。
数年前には想像もできなかった平和だ。
もしもあのままだったら今頃自分はどうなっていただろうか──あまり楽しいことにはなっていないだろう。
「おはようさん、いつも早いねぇ」
不意に声をかけられ、は足を止めた。
横の絵を見ると、驢馬に乗った旅人が帽子を上げてにっこりしていた。この旅人は早朝の散歩ではよく会う。けっこう気のいいヤツだ。
「おはよう。今日はどこまで?」
「いやいや、これから帰るのさ。昨日はパーティに呼ばれていてね」
「そうなんだ。いいなぁ、パーティ。楽しそう」
「久しぶりに会う方もいましてね、そりゃあ楽しかったですよ」
旅人は昨夜のパーティの様子をウキウキと話し、はニコニコと相槌を打つ。
そして、旅人が絵画を驢馬でゆっくり移動しはじめると、は再び散策のため歩き出す。
部屋を見つけては開けて中を覗き込み、タペストリーはめくり、絵や壁も突いたり撫でたりして隠し通路がないか調べていった。
そもそも、隠し通路のことを知ったのは入学式の宴会後、監督生に連れられてグリフィンドールの談話室へ向かう時のことだった。監督生は慣れた調子でタペストリーの向こうの暗い通路を抜け、何もない壁をノックして道を出現させたりしていたのだ。
それを見て、これだけ広い城なのだから他にもあるはずだ、とは思ったのだった。
この一週間で八階と七階はほぼ見て回った。今日は六階である。
いつものように進んでいると、絵と絵の微妙な隙間の壁を叩いた瞬間、何かが手の甲に触れた。例えるなら、こんにゃくのようにひんやりして弾力があるものだ。
ちょっと気持ち悪いな、と思いながらもはそこをもっとじっくり触った。そして、壁の一箇所だけやわらかいことがわかった。
一歩、壁から離れて少し迷った末、はそのやわらかい部分を思い切り押した。
「ぅわっ」
一瞬の抵抗の後、そこには何もなかったかのように抵抗が消え、は前につんのめった。トトン、と数歩踏み出して、どうにか転倒をまぬがれると、薄暗い室内には何かを見つけようとするかのように目を細くした。
やがて目が慣れてきてわかったのは、室内に大小様々の無数の箱があることだった。
少し埃っぽい室内を、はできるだけ埃が舞わないよう静かに歩き、一番近くにある箱の前で止まった。
見たところ、正方形でベージュ色のごく普通の箱である。照明がないためよくわからないが、最も大きい箱で引越しの時に使うくらいのダンボールほど、最も小さい箱で指輪ケースほどのもののようだった。
いったいこれらの箱は何なのか?
の好奇心は「開けてみたい」と強く訴えていたが、そろそろリリーが談話室にやって来る時間だということに気付き、諦めることにした。
チャンスはまたあるはずだ。それに、リリーと一緒に来てもいい。
は部屋を出てグリフィンドール寮へ戻っていった。
『太った婦人』に合言葉を言い、談話室への穴を這い上がるなり、リリーの声が飛んできた。
「! あなたどこへ行ってたの? いつもならここにいるのにいないから心配したわ!」
「ごめん。絵画としゃべってたら遅くなっちゃった。朝ごはんに行こう」
リリーには何事も素直に接するのがいいということを、この一週間で学んだ。彼女はとても勘が鋭い。ごまかしや嘘は通用しないのだ。
が素直に謝ったことでリリーは安心したのか、読みかけの本をテーブルの上に置いて立ち上がった。
と、そこに男子寮への扉を開けてジェームズ達が降りてきた。
彼はリリーとを見つけるなり「おはよう!」と元気に手を振りながら小走りにやって来た。後ろからピーターとシリウス、そして同室のリーマス・J・ルーピンもついてくる。
入学式の翌日の朝、4人が同じ部屋だということをピーターに聞いた。そして、何があったのか、宴会の時ツンケンしていたシリウスがすっかりとは言えないが、彼らと穏やかに会話していたことには驚いた。
さらに驚くことに、あの時地雷を踏んでしまったらしいに対して謝罪してきたのだ。
いろいろと複雑なものを抱えているのだろう、とは思った。
そして、その時初対面となったリーマス。鳶色の髪のおとなしそうな顔の少年。
彼を見た瞬間、の心臓が一回大きく鳴った。
残念ながらトキメキではない。
例えるなら、久しく会っていない親戚に会ったような感覚だ。
向こうもそう感じたのか、2人は自己紹介をする前にお互いじっと見つめあい、ジェームズ達にからかわれた。
が、それ以来特に何もない。
まさか「親戚ですか?」などと聞けるわけがない。
そもそも、自分と血のつながった人間がこの世にいるのかどうか、は知らない。
大広間のグリフィンドール席に着くなり、毎回の食事ごとにシリウスVSのチキンを巡る熾烈な戦いが起こる。
チキンが大好物のシリウスと一人で5人前は軽く食べてしまうが近くに座るのだから、たとえ2人の関係が良好になったとしても、これはこれ、とどちらも譲らないのだ。
離れて座れば? とチキン争奪戦5日目あたりにリーマスが言ったが、これはジェームズに却下された。
何故なら、彼は最近リリーに興味があるからだ。
明るくてハキハキして可愛いリリーはすでにグリフィンドール男子生徒から憧れの眼差しを向けられるようになっていたが、ジェームズもその一人になっていたのだ。しかも彼は好きなものには積極的な性格だった。
ジェームズとリリーが和やかな会話を楽しんでいる横で、シリウスとが醜い争いを繰り広げ、ピーターとリーマスは諦観の顔で食事に集中する。
それが今の彼らであり、グリフィンドール席の一角の日常になりつつあった。
「お前は食いすぎなんだよ。一人で10個も20個も食うな!」
「アンタだって似たようなもんでしょ。そもそもチキンしか食ってないじゃないか。野菜も食え、ほら」
「勝手に人の皿に盛り付けるなっ。そんなことしたってチキンは取ーる!」
「それは私のだー!」
「あんた達うるさいわよ!」
シリウスとの間に怒鳴り合いが始まると、それ以上の大声で力ずくで鎮圧するのがリリーの役目になっていた。
2人ともリリーには逆らえず、口をつぐむが目だけはまだ戦闘状態だった。
「だいたいお前の食欲は異常なんだよ。知ってるか? この席だけ料理の量がすげぇ多いんだぞ」
「知ってるよ。私のためだけに用意してくれてんだ」
「そんなワケないだろバカ」
「バカ? 今、バカって言った!?」
「言ったとも。どこまでも自己中心的などっかの白髪女に対してな!」
「上等だ、お坊ちゃん。ちょっとゆっくり話し合いでもしようか!」
「いつでも応じてやるぜ!」
この頃になると、諦観と傍観を決め込んでいたピーターとリーマスもそわそわと落ち着かなくなる。ちなみにジェームズはおもしろがって見ている。
「毎日飽きないねぇ」
クスクス笑うジェームズの前には、困った人達だ、とため息をつくリリー。
「これのおかげでいまだに他寮の人には男だと思っている人がいるんだよね」
「本当にねぇ。ローブの前もピッチリ閉めてるし。もったいないわ。ちゃんとすればとても綺麗な女の子になれるのに」
「でも、外見が綺麗になっても中身がアレじゃねぇ……」
「うん……」
の胃袋はいったいどうなっているのか、また食事が絡むとどうしてあんなにガラが悪くなるのか。目下の疑問である。
そしてついにシリウスとがテーブルを殴りつけて立ち上がると、ピーターとリーマスが体を張って止めに入るのだ。
「2人とも落ち着いて。他の席から余った料理もらってくるから」
「リーマス……今もめてるのはそのことじゃなくて……」
止めに入るのはいいが、リーマスの観点はいつもどこかずれている。
そしてそれを毎回丁寧に指摘するピーター。
それでも2人が止めに入ればシリウスもも怒りを静めるのだ。
「、そろそろ教室に行きましょう」
頃合を見計らってリリーが言う。
これで食事タイム終了。
食事が終わってしまえばシリウスとは意外と仲が良い。意見の食い違いはあっても、食事時のようなことにはならない。
呪文学の教室へ向かう途中、ふとは今朝の箱だらけの部屋を思い出した。
「ねぇ、リリーも今度一緒に朝の散歩しない?」
「いいけど、何かおもしろいものでも見つけたの?」
は箱の部屋のことを話した。
すると、リリー以上にジェームズが興味を示してきた。
「そんな部屋があったなんて! 僕達も城内探検してるけど、見つけたことなかったなぁ。それ、どこにあるの?」
「6階だよ。北塔だったかな」
「へぇ……皆で行ってみようか。というか、僕は行きたい」
最後で本音が出たジェームズ。
シリウスも同意したから、リーマスやピーターも自然と一緒に来るだろう。余程の用事でもなければ。
「大丈夫なの、その部屋。なんだか不気味じゃない?」
「私は無事に帰ってるけど。今も特にヘンなところはないし」
心配そうなリリーにはあっけらかんとして答えた。
「……それじゃ、リリーはお留守番ってことで、明日の朝5時に談話室に集合でどう?」
「明日の朝? 今日の夜は?」
「ちょっと、私も行くわよ!」
とジェームズで出発の打ち合わせを始めると、リリーが慌てて割り込んできた。
2人は獲物が罠にかかったのを見つけた時のような笑みを交し合った。
は改めて言い直す。
「じゃあ、6人みんなで夜の11時に出発、でいいかな」
反対意見はなかった。
夕食後、6人は談話室で宿題を片付けながら、時間が来るのを待った。
10時半になるとほとんどの生徒が部屋へ戻って行き、談話室でねばっているのは6人と数名の生徒のみとなった。
この時、6人の心は一致していた。
(あいつら早く部屋に戻れ)
顔には出さないが。
こうなると宿題には全く集中できない。羽ペンは握っているだけ、教科書は開いているだけだ。
そんな彼らへの嫌がらせか、談話室に6人だけになったのは11時半になる少し前のことだった。
手早くテーブルの上を片付けると、6人は改めて誰もいないことを確認し、教科書類を詰め込んだカバンはそのままに、そっと談話室を出たのだった。
「ミセス・ノリスとピーブズに見つからないようにしないとな」
シリウスが促した注意に、は足音に気をつけて歩を進めた。箱の部屋の場所を知っているのは彼女なので、先頭を任されている。
まずは無事に北塔へ着いたところで、妙に慣れた動きの男4人に不審げな視線を投げながらリリーが言った。
「ジェームズ達はいつもこんな時間に出歩いてるの?」
リリーがこう言ったのは、呪文学の教室へ行く途中のジェームズのセリフを思い出したからだ。
リリーのそんな視線に気付いているのかいないのか、ジェームズは少し得意そうに答えた。
「まぁね。でも他にも同じようなことをしている人がいるとは思わなかったけどね」
「私は夜中に出歩いたりしない」
同罪にされそうになったが素早く訂正を入れた。
「それより、ちょっとうるさいよ」
咎めるように振り返ると、真後ろにいたリリーが小さく息を飲む音が聞こえた。
はハッとして慌てて前へ向き直る。
リリーは、一瞬の目が暗闇の中で光っているように見えたのだ。まるで夜行性動物のように。
彼女は何かを言おうとしたが、何をどう言っていいのかわからず、それ以降は口をピッタリと閉じて黙々との後を続いた。
何度かゴーストをやり過ごしただけで、は再び箱の部屋の前に立つことができた。
「開けるね」
後ろを振り向かずに小さく告げると、は壁のやわらかい部分をグッと強く押し込んだ。
相変わらず中は真っ暗だった。
すぐにジェームズ達も室内に入ってくる。
「ルーモス」
と、言ったのはシリウスだった。
彼の杖の先に明かりが灯り、室内を照らし出す。
の思っていた通り、そこには前に来た時と同じく、大小様々の積み重なった箱だらけの部屋だった。配置も変わりない。
一度この部屋に来た以外の5人が部屋の有様に息を飲む。
「本当に箱だらけだ」
ジェームズがポツリと呟いた。
「いったい何の箱だろう」
ピーターがちょうど近くにあった10cm四方の箱に顔を近づけて観察している。
ジェームズもその箱を上や横からじっくり眺めた後、達を振り返ってニヤリとして言った。
「開けてみようか」
「ダメよ!」
真っ先に反対したのはリリーだった。
「どれもしっかり包装されているじゃない。きっと何かあるのよ」
リリーは強く言うが、かえってジェームズの好奇心を煽っただけだった。
「何かがありそうだから開けてみるんじゃないか」
「とんでもないことが起こったらどうするの」
「逃げる」
「無責任よ」
勝負はつきそうにない。
はどうかと言うと、開けてみたくて仕方がない。
が、リリーにそう言ったらジェームズ同様、猛反対されるだろう。
はシリウスとリーマスを見た。
2人もを見ていた。
そして以心伝心。
3人はリリーのことはジェームズとピーターに任せ、彼らに気付かれないようにジリジリと部屋の隅まで移動して、比較的小さな箱を探した。
開けて何かあっても被害が小さそう、という理由で。
はチラチラとリリー達を気にしながら箱を手に取る。
シリウスは杖をわずかに下げた。リーマスはちょうどリリーから壁になるように立ち位置を移動する。
打ち合わせたかのような見事なチームワークだ。
が手に取った箱は包装はされておらず、プレゼントのようにリボンで結われているだけの箱だった。
はできるだけ音を立てないよう、リボンをほどいていった。
蓋に手をかけ、はシリウスとリーマスに視線を送ると、2人はニヤリとして小さく頷きを返してきた。
箱の中にはいったい何があるのか。
は思い切って箱を開けた。
とたん、ボワン、とどこか間が抜けた音が響き、煙幕のように煙が噴き出した。
「あなた達!」
すぐにリリーの鋭い声が飛んできたが、煙で彼女がどこにいるのかわからない。
それどころか、すぐ側にいたはずのシリウスやリーマスの姿も見えなかった。
「と、とにかく外に出よう」
遠くでジェームズの声がした。
は声を頼りに方向を定め、入ってきた壁を目指した。
途中、何かを蹴飛ばしたようだが、かまわず外に飛び出す。煙で息苦しくなってきていた。
バタバタと足音を響かせて、どうにか全員廊下へ出ることができた。
6人はしばらく咽ていた。
ようやく息が落ち着き、先ほどの現象について話し合うか、再び中に入るかしようとした時だ。
「おやぁ? そこにいるのは可愛い一年生ちゃんかぃ!?」
こんな時、一番会いたくない相手、ピーブズだった。
ピーブズは空中の中途半端なところをフラフラと漂いながら甲高い声で叫び散らす。
「こんな時間にいけないんだぁ! 誰かに見つかったら……知らせてこなくっちゃ!」
「待て!」
シリウスが呼び止めるが、ピーブズにはますます嫌なニタリ笑いを深くした。
ジェームズがシリウスの腕を引いた。
「フィルチが来る前に戻ろう!」
「お、帰るのか、帰っちゃうのかぃ!? フィールチー!! ここにイケナイ子達がいるぞォォォ! 北塔の6階だァァ!!」
鼓膜にガンガン響く狂ったような大声でわめき出すピーブズ。
こんなところで掴まるなんて冗談じゃない!
達は弾かれたように走り出した。
ジェームズを先頭に全力疾走をする。
遅れがちなピーターに気付き、は彼の腕を引っ張った。
「がんばれっ」
に励まされ、ピーターはもつれそうな足を必死で動かす。
その間にもピーブズの大声は追いかけてくる。
頼りはジェームズだった。
彼がグリフィンドール塔までの最短距離を行ってくれればいい。
は前のリーマスの背を見失わないよう、ピーターの手を離さないよう、いくつも抜け道をくぐり、階段を駆け抜けた。さすがに心臓が飛び出しそうになってきたが、足を止めるわけにはいかない。
息が上がり、足も重くて上がらなくなってしまいそうになった頃、6人はやっと『太った婦人』の前にたどり着いた。
自分の前で息切れだけを繰り返す一年生6人に、『太った婦人』は「あなた達こんな時間に何をしているの?」と不審感たっぷりに言ったが、彼らに返事をする余裕はない。
喘ぐようにジェームズが合言葉を言い、何とか談話室へ転がり込むと、全員ようやくまともに呼吸ができるようになったのだった。
ぐったりとソファに倒れ込む。
「結局、あの箱は何だったんだ?」
汗で濡れた額をぬぐいながらシリウスが言ったが、誰も正確な答えを持っていない。
「だから開けちゃダメって言ったのに。誰よ、開けたの」
「私です……」
「! もぅ、どうして!?」
リリーに睨まれ、は身を縮めた。
「まぁまぁリリー、落ち着いて。火がついたわけでもないし、誰も怪我しなかったんだからいいじゃないか」
「全然良くないわ!」
ジェームズのとりなしにリリーは落ち着くどころか、ますます目を吊り上げた。
「得体の知れないものを軽々しく開けるなんて! もう、絶対あなた達と一緒に行かないから!」
ズバン、と言い捨てるとリリーは置いていったカバンをサッと取り上げ、肩を怒らせて部屋へ戻っていってしまった。
「何だありゃ。自分で一緒に来るって言ってついてきたんじゃねぇか」
「きっとびっくりしたんだよ。明日になれば元に戻ってると思うよ」
口を尖らせるシリウスには苦笑しながら言った。
「、異常はない?」
箱を開けた時、側にいた一人であるリーマスが心配そうに言った。
は肩をすくめて軽く笑う。
「ここまで元気に走ってきたけど、まったくもって異常なしだよ」
「そう。良かった」
「ありがとう。私もそろそろ寝るよ。少ししたらまた様子見に行ってみない?」
立ち上がったは欠伸混じりに提案すると、もちろん、という答えが返ってきた。
はそれに頷き返すと、おやすみ、と告げて談話室を後にした。
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